はじまりは、ひとつの相談だった。
「独立したい」。そう打ち明けてきたのは、代表・竹内の旧友、高橋だった。古くからの友が、自分の場所をつくろうとしている。その背中を押さない理由は、どこにもなかった。
友の思いに寄り添うようにして、ひとつの会社と、ひとつの店が生まれた。会社の名は GRAPES。最初の店は、GRAPES KITASANDO。2015年の冬のことだ。
つくりたかったのは、たったひとつの、けれどこのうえなく贅沢な時間だった。良い音楽を、良いお酒とともに、椅子に深く腰を下ろして、ゆっくりと愉しむ。急かされることも、背伸びをすることもない。ただ音に身をゆだね、グラスを傾ける夜。
ステージには、1921年製のスタインウェイ「Model O」を据えた。百年という時をくぐり抜けてきたピアノは、鍵盤に指が触れるたび、その年月ごと鳴りはじめる。客席は50席。奏者の息づかいまで届く近さで、その音を受けとめることができる。
名前は、ワインのぶどうから借りた。
ぶどうの樹は、年を重ねるごとに根を深く下ろしていく。地表の土を越え、さらにその下の、まったく別の地層へ。そこから汲み上げた養分が、実に複雑さを与え、ワインの味わいを少しずつ深くしていく。若い樹には、若い樹の伸びやかさがある。古い樹には、古い樹の静かな奥行きがある。
音楽も、きっと同じだ。若く、勢いにあふれた音がある。年輪を刻み、老獪な渋みをたたえた音がある。そのどれをも拒まず、包み込み、ともに育っていく場所でありたい。その願いを、ぶどうという言葉に託した。
モチーフにしたのは、ニューヨークのジャズクラブ「SMOKE」だった。けれど、ここをジャズだけの場所にするつもりは、はじめからなかった。
日本という国は、海の向こうからやってきた文化を受け入れ、自分たちの手でほどき、まったく新しいものへと育ててきた。それは、この国がもつしなやかな強さだ。だからこの舞台には、ジャズも、インストゥルメンタルも、ポップスも、ロックも立つ。オーディションを通った人がいて、音楽プロデューサーに見いだされた人がいる。若い才能も、熟練の奏者も。どんな音楽も受けとめる、懐の深い場所でありたかった。
そしてもうひとつ、この店には大切にしているかたちがある。
ライブハウスの多くは、地下にある。重い扉を押し開け、階段を降りた先で、音楽は鳴っている。GRAPES KITASANDO は、その逆を選んだ。北参道の通りに面した一階、ガラス張り。夜になると、キャンドルの灯りとピアノの音が、通りまでこぼれていく。
音楽を閉じ込めるのではなく、街へひらいていく。たまたま通りかかった人が、ふと足を止める。ガラス越しに演奏を眺め、気づけば扉を開けている。その夜から、その人もまた、この店の新しいファンになる。
そんな開かれたライブハウスであり続けること。それが、最初の店に込めた、いまも変わらない願いだ。
Team( 店をつくる人 )

チーフマネージャー
高橋 慎一郎

ブッキングスタッフ
王 心悦
オウ シンエツ
Information( 店舗情報 )
- 住所
- 〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-3-11 ニューベリー千駄ヶ谷1F - アクセス
- 北参道駅 1番出口から徒歩1分
代々木駅 北参道方面に徒歩7分 - 電話
- 03-6447-0160
- 定休日
- 不定休
- 席数
- 50席
- 開業
- 2015年12月












